「無駄」に救いを求める皮肉

この前、羽田圭介さんの小説『滅私』を読んだ。

 

ネタバレあり。まだ読んでいない方は、ここから先は読まないでください。

 

 

「愛着が湧く前に捨てる」というのが鉄則のミニマリスト・冴津が主人公。

 

自分の身の回りから「無駄」を省くことに人生をかけていて、人からもらったものは、家に帰るとすぐに開封もせず捨ててしまう。

 

身体に贅肉がつく食べ物も排除しており、旅行中に彼女からもらったお菓子も、一口だけ食べてホテルのゴミ箱に捨ててしまう。

 

あとからそれを見つけて固まっている彼女を見て、やっと自分がやらかしたことに気づくほど、冴津の中では「捨てる」が呼吸するのと同じくらい当たり前になってしまっている。

 

そんな冴津のもとに、彼の後ろめたく暗い過去を知る男が現れる。その男は冴津のコミュニティに入りこみ、他のメンバーとも親密になっていく。

 

冴津の領域にどんどん浸食してくる男の不気味さや、それがきっかけで、冴津が無駄なはずのものに徐々に救いを求めていくようになる様子が、特におもしろかった。

 

それにしても、まさか、あんな終わり方をするなんてねぇ。

 

ぐいぐい読んでいたら、突然終わっちゃった!みたいな感じで、夢中になって読んでしまった。はぁ~おもしろかった。

 

 

お題「この前読んだ本」