コウボクノマック

金原ひとみさんの『アタラクシア』を読んだ。

 

ネタバレあり。まだ読んでいない方は、ここから先は読まないでください。

 

 

コウボクノマックとは、Twitter(現在はX)で知り合った22歳の女性をホテルに連れ込み殺害した、本書の登場人物・荒木祐司のアカウント名。

 

他の登場人物がテレビで、荒木が女性を殺害し逮捕されたニュースを見ているシーンを読んで、あれ?コウボクノマックってどこかできいたような?と引っかかった。

 

それでも先が気になり読み進めると、俳優で作家の中江有里さんの解説で「コウボクノマック=ユウト」という記述が。

 

ここで合点がいく。ああ、コウボクノマック・荒木祐司は、Twitterのオフ会で、登場人物の枝里を強姦したユウトと同一人物だったんだ、と。

 

え、じゃあ殺害された22歳の女性って、まさか枝里?そう思って枝里の章に戻って読み返したら、年齢が2つ違っていて、なぜか安心した。

 

荒木と不倫している真奈美の章では、荒木は強姦などとてもしそうにない人に見える。でも枝里の章に出てくるユウトを改めて読むと、その外見や年齢は荒木と重なっていた。

 

こういう、後から「この人はあの章で出ていた人と同じ人物だったんだ!」とわかる仕掛けが大好き。

 

物語そのもののおもしろさで満たされているところに、さらにサプライズでプレゼントをもらったような気分になりうれしくなる。